篤姫 二十七回 徳川の妻

篤姫宮崎あおい)が、薩摩の養父、島津斉彬高橋英樹)の密命を振り切り、家定(堺雅人)の妻として徳川の人間になりきり生きることを決意する。その篤姫、家定の純愛を軸に、当然生じてくる幾島(松坂慶子)との熾烈な葛藤や、次期大老彦根井伊直弼中村梅雀)にしたい派(本寿院:高畑淳子)と越前の松平慶永矢島健一)を望む派(斉彬)の嘆願書騒動などの闘い、薩摩の動揺などを描いた章。

時代が刻々と変貌していく経緯と、家定の命の尽きる日に向かっていることを平行して描いていき、それはとても繊細に儚いイメージの色が強いのだけど、「前に今度生まれる時は鳥になりたいと言ったがごめんじゃ。わしはわしでよかった。そなたに会えたからじゃ」「わしのような力のない身体の弱い男の妻になって後悔はないか」という言葉に具現する家定のおそらくはじめて感じたのであろう生きる喜びと”家族”に託す思いの強さは、確かなリアリティをもっている。

そして、家定は世継ぎを、慶喜平岳大)ではなく紀州の慶福(松田翔太)に決めると篤姫に告げるのだが、その理由は、慶福は年が若いから、篤姫が補佐し、サポートができるからだという。
この意味はすごい重大である。家定がいかに公正に篤姫の意見や人間性を見て受け止めていたか、ということで、この将軍の清明かつ英明さをあらわしている。

ただその分、幕府の他の人間がみんな志の低い人間であるかのような意味づけになっていることが気にはなったが。