深い河 2

遠藤周作原作の深い河は、本を読む楽しさを与えてくれる。
だが、こう言っては遠藤周作ファンに袋叩きにあいそうだが、深い河は退屈だった。初版が出た十数年前に読んだ時も十数年後の今回も退屈だった。おそらく、三度目に読む時、私は死の床にいるかもしれないが、やはり退屈だと思うだろう。

彼は醜く、威厳もない。みじめで、みすぼらしい
人は彼を蔑み、見すてた
忌み嫌われる者のように、彼は手で顔を覆って人々に侮られる
まことに彼は我々の病を負い
我々の悲しみを担った


深い河の登場人物は、この言葉をファッションのように具現しただけだ。
インドに流れた大津がなんでこの言葉の存在であろう。


日本のこの社会の中にこそ、この言葉の存在を描くことではないだろうか。こう言っては本当に遠藤文学を尊ぶ人から怒られそうだが、遠藤周作には、本当のこの存在は書けないだろう。そう生きていないからだ。
もっとも日本でそう生きた人は、沈黙したまま死んでいったろうし、これからもそうだろうと思うけれど。