遺留捜査「空のマッチ箱」

このドラマは最初の回から、好感をもって観ている。主人公の糸村(上川隆也)は、事件が起こると被害者が遺した遺留品を鑑定にかけたり分析したりして容疑者を探るという遺留捜査官である。他の捜査課の刑事たちから無視されたり煩わしがられたりする、いわば浮いたキャラクターであるが、ひたむきに我が道をいく捜査をしていく。特につっぱるわけでも反発してきりきりするわけでもなく、深い優しみをひそめどこか少年ぽく突っ走るのだ。

そういう糸村が、血にまみれた殺人現場の被害者の遺留品のなかから、たいていは他の刑事が問題にしない小さな何気ない物に目をとめ、指でそおっとそれを取り上げ、そこからドラマの本流に入っていくのだが、私は糸村がこの小さな何気ない物を見つけるシーンが好きである。海の浜の小石のなかから、一粒の真珠を見つけた時のような繊細な表情でつまみあげた物を見つめる糸村。彼はこの時、その物に被害者の生の証ともいうべき想いがこもっているのを感受し、その物を追って被害者の人生を浮き彫りにし、必然的に犯人にいきつくのだ。

こうした糸村の風変わりさに戸惑いといら立ちを感じながらも、結局は理解していく相棒の刑事(貫地谷しほり)、後輩の同課の捜査官、鑑識官は的を得た演技で素敵である。

ただひとつ「うーん」と思うのが、毎回の容疑者が涙にくれるラストの湿っぽさである。「空のマッチ箱」はほどよかったが、これまでの回はちょっと白けるほどくどくて残念に思った。