煩悩と苦・・・私にとっての地獄

思い煩う煩悩が苦しみを呼ぶことは仏教書を読まなくてもわかる。
だがなかなかその煩悩というやつからの脱却ができない。

私の家の斜め裏側のお宅が引っ越されて別の家族が入られたのはもう一年以上も前になるのだが、この新しいお宅が複数匹の子猫を飼われていた。白い猫、鯖猫、茶とらなどみんな鈴をつけていた。
やがて白い猫がおなかが大きくなっていることに気づいた。


『赤ちゃんが生まれるんだなぁ・・・貰い手探しをされるのだろうか』とふと懸念がよぎった。・・・ここから私の煩悩がはじまったのである。
やがて煩悩は深くなってくる。おなかの大きくなっていた白猫の姿が見えなくなったのだ。そしてそのお宅の隣り、かつ我が家のすぐ裏になるお宅のおばあさんが、「隣の猫、何匹もいたのにみんないなくなった」と言われるのを聞いてしまったのだ。
それでたまたま猫複数匹の家のご主人とばったり行きあった時に、「最近猫が見えませんがどうしたんですか?」と訊いた。
すると、ご主人は?なと思うくらい早口で、「いなくなったんですよ」といわれる。
「白い猫はおなかが大きくなっていましたけど、子猫は生まれたんですか?」
「あの猫もいなくなったんですけど、おなかが大きいのは最初からだったんです」とこれも超早口である。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・(ウソつけ! あの横にはったおなかは妊娠に間違いないですよ!)」

私は絶句した後、「そうなんですか・・・」と言ってそこを離れたのだったが、胸のうちは捨てられたに違いない猫たち、特に妊娠していた猫への悲しみとやりきれなさでいっぱいだった。以後しばらく食事もとれないほどかわいそうでかわいそうでならなかった。猛暑のなか住まいから放り出され、餌もなく、安眠の場もなく、こどもが生まれ来るこどを身体じゅうで感じる時の不安、そして生まれた後の苦しみはいかばかりだろう。どれほど辛かろう・・・・・・。


それから三カ月ほど経っての今日(30日)の朝のことである。裏側のおばあさんが「国勢調査ではお世話になってどうも」と声をかけてこられた。数日前に頼まれて国勢調査の記入を手伝ったお礼を言われたのだ。
そのまま立ち話になったのだが、その時、お隣りの猫の件のお宅の庭に、また新しい猫が何匹かいるのに気づいた。黒い猫は赤いリボンをつけられており、その黒猫が産んだのか三匹の子猫の計四匹である。
「あ、また猫を飼い始められたんですね」と呟くように言うと、立ち話ししていたおばあさんが、「茶色のような猫もいるはずだよ」と言われる。
私の煩悩は再びそこから強くなった。そこのお宅は、我が家を通り過ぎる一番奥に位置する家だ。知らない人が通られるとギャンギャンうるさい犬のいる我が家の前を通り越して猫を数匹捨てて行く人はいないはずだ。もしいたら、捨てられた子猫数匹の泣き声で私が気づかないわけはない。また森の外に捨てられた子猫数匹が、そろって森の茂みを抜けて、森側にいる我が家の犬にほえられながら、裏手の家の庭に辿り着けるわけはない・・・ということは、このお宅の人が、よそから数匹の子猫をつれてきたに違いない、と感受したのである。

猫が飼いたくてよそからもらってくるのは別に何も心配な材料にはならない。だが、このお宅の場合、次々に新しい猫にかわるのだ。よその人のすることをいちいち見咎めたり、心配したりするのはこちらの了見違いだ、と自分に言い聞かせるが、抑えても抑えても不安がよぎる。

それで、立ち話をしていたおばあさんに、「あんなにいた前の猫はいなくなったようなのに、またいっぺんにたくさん飼われるんですね・・・なんか・・・大丈夫ですかね・・・ちょっと大きくなるとまたいなくなるようではそれは絶対おかしい・・・」ともろに不審な思いを出して言った。


この猫たちへの心配ごとと別に、同じ地区内だがちょっと離れた家では三匹の犬を飼っておられるのだが、一匹の大きな犬はロープで繋いでおられ、あとの二匹は放し飼いになっている。このロープで繋がれている犬が、我が家のお隣りのおばあさんが自転車で通りかかられたところを足に噛みついたというのだ。そしてそれを聞いた折りにわかったのだが、二匹の放し飼いの犬がそろっていなくなっているというのである。一匹のほうの子犬はうちにも遊びにきていたが9月はじめに姿を消している。http://d.hatena.ne.jp/maomao2008/20100912/1284249380もう一匹のほうも消えていたのか・・・・・と新たな疑念がわいてきてその犬たちのために気が重くてたまらなくなっている。


そして私のこうした煩悩が新たな苦を呼ぶというのは、こうした不審な出来事をあまりに気に病みすぎるということもあるが、それに留まらず、踏み込んでしまうことなのだ。


私の状況はただでさえ厳しく辛いところなのに、斜め裏の家の現在の猫たちと、お隣りのおばあさんを噛んだ犬を守らなければならないと思い詰め、ある動物病院の先生に、不妊手術をどこよりも安くしてほしいと頼み込み、猫たちと犬の手術をすすめようと踏み込んでしまったのである。
猫は数匹いるので12月まで支払いを待ってもらえるなら半分は支援ができるつもりである。犬のほうはオスのようなので、手術をすることで人を噛むこともなくなる可能性がある。それを頼みにして、おばあさんを噛んだとはいえ守ってやってほしいからだ。

これがスムースに運べばいいのだが、こじれると結局猫や犬の受難を呼ぶことになってしまう。・・・とこうした煩悩は私にとってはまさに地獄である。


捨てるな! こどもがいらないなら不妊手術をしろ! そして飼うなら、猫かわいがりも贅沢も必要ない、最低限の守り方でいいから守ってやれ! この世を弱い立場のものの地獄にするな! 虚無の地獄にするな! 猫も犬も、何も欲しがりはしないだろ、ただ生きるに必要な、質素な食べ物と水、安心して眠れる自分の場所と、そしてそして、飼い主のその人に出来る範囲でいい愛情があればいいのだ!!! ニャロメ!!!!!