龍馬伝「故郷の友よ」

昨日の龍馬伝では、武市半平太大森南朋)にまつわる別れが描かれた。岩崎弥太郎香川照之)との別れ、激烈な攘夷の思想をもとにともに闘った門弟たちとの別れ、半平太の心のうちにあった龍馬への想いを口にしての別れ、そして、どんなときも黙って清く自分を支えてくれた妻、富(奥貫薫)との別れ。

これらの別れを通して、この龍馬伝の中の半平太という人物がよくわかった。いつも肩張って、まるで吸うことを忘れ吐くだけの呼吸しかしてないようだった半平太の、生身の息遣いや肉体の感覚を身近に感じた。
特に妻との別れの場面は大好きだった。夢と優しさでいっぱいの宮沢賢治の童話の世界を駆け抜けた少年のようだった半平太。私はあらためて権力(近藤正臣)の冷酷と狡さへの嫌悪を覚えた。

奥貫薫にとっては、悔いの残った場面になったのではなかったろうか。
私は彼女は、聖母マリアマグダラのマリアかどちらの富を演じるか苦しんだのではないだろうか、と思った。結局、もうひとつ鮮明さが出せなかった。・・・という印象であった。
自分の身をもって演じるといことは、身を裂くように苦しいときもあるのだろうなとも思った。
トータルでは、奥貫薫の富は成功だったと思う。裏棚の朝顔が朝露をうけてひっそりと咲いているようで、いつも可愛らしさのある美しさがあって素敵だった。