龍馬伝 第19回「攘夷決行」

攘夷に国や藩や自分たちの人生の夢を命がけで託していた土佐勤王党の若者たちが、悲劇の崖下に向かって滑り落ちていくその前夜ともいうべき回。

武市半平太大森南朋)の混乱と、土佐藩の役人に追われる収二郎(宮迫博之)の絶望、武市にどこにでも行けと突き放され孤独と不安に慄く以蔵(佐藤健)をカメラは追い、天下国家を動かすのは結局は営々と続いてきた魑魅魍魎たる権力だという無残と、それが良い思想であったか愚かであったかは別として純粋に苦悩する若者たちの非力の残酷を浮き彫りにする。

現代もひとつもかわらないという思いで、ドラマの若者の一人一人の苦しみ、悲しみがかわいそうでならなかった。
龍馬(福山雅治)は老成した完全者として描かれていないから、幼馴染たちが辿ろうとしている運命の痛みにこどものように泣く。こうした龍馬が本当に魅力的だと思い共感しながら観た。そしてまだ大分先のことなのに、やがて来る龍馬の悲劇の死がたまらなく寂しく感じた。また、魑魅魍魎の権力をもものともせず、その自由な真っ直ぐな精神で時代をかえていった人物の偉大さをあらためて思っている。