龍馬伝「お尋ね者龍馬」

いよいよ土佐を離れ、脱藩者として追われながらも、自分の道をまっしぐらに疾走する龍馬(福山雅治)の生き様が描かれる2部のはじまりである。

沢村惣之丞(誤字?)(要潤)とともに脱藩した龍馬は、真っ直ぐに京には行かず、薩摩が製作する大きな船の様子を見に行ったようだ。沢村は京に行く途中の大阪で、そんな龍馬を茶店で愚痴ったりしている。

この時大阪に来ていたのは、岩崎弥太郎、土佐勤皇党の党首として堂々たる土佐の重要人物になっていた武市半平太である。
岩崎は龍馬の追っての一人である。そして偶然、やっと大阪に来た龍馬に会うのである。おりしももう一人の追っ手も龍馬を見つけ、捕らえようと襲い掛かる。「この男は役人を切って脱藩した罪人だ」とわめきながら、見ている人が竜馬を加勢しないようにしむける。吉田東洋を切ったのは龍馬だと噂が真実のように流れているようだった。
それを聞いた見物人は、茶店の椅子に置いていた龍馬の刀を蹴って追っ手に加勢したりする。
脱藩するときに、それを怒りもとめもせず送り出してくれた兄からもらった大事な刀である。それを見て龍馬は短刀を抜いて応戦し、鋭い刀さばきですぐに相手を追っ払う。
龍馬は昔の龍馬とは違うのだ。姿も、巻き毛の髪を結いもせず、ボサボサのまま肩まで垂らし、威風堂々のたくましさであった。

弥太郎は目の前で繰り広げられた光景を茫然と見ていた。「龍馬、変わったのぉ」という声が震えているほどだ。
実際、はにかんだ笑顔は昔のままだが、表情には昔にはなかった陰りのようなものと、刀を抜くことにたじろぎのない強いものがあった。

だが一点だけ、福山雅治の龍馬像に物足りないものを感じている。それは、能動的な強さが見えないことにだ。弥太郎(香川照之)、武市(大森南朋)の圧倒的な存在感は、演技が上手などという前に、役の人物に能動的になりきっていることにある気がする。福山龍馬はもっと厚かましくなっていい。