大学生といえば、平野佳美著「猫又ハイジは裁判員 人又オババは大学生」

平野さんは、勉強中毒あるいは依存症のようです。もともと学校の教師をされていた方ですから、充分勉学をしてきた方なのですが、現在早稲田の大学生をされているのです。

西鶴』を、猫又ハイジと著者の掛け合いで評論しているのですが、これが読者に西鶴を二度楽しませていて面白いです。西鶴の描く江戸時代の人間の深層と、平野さんが視る現代の人間は同じ土俵で生きていて、思わず「うんうん」と膝を打ったりしてしまいます。
ハイジを説明役(黒子)にしているのが成功していますね。猫って奥深いこと言いたがる存在だから、猫又ハイジもその役割りかと思ったら黒子に徹していて、そこが非凡だなぁと感服しました。

私も「木の上のハンベェ」という猫を登場させて物語を作っているのですが、ハンベェを哲学者にもっていこうとするのでなかなか進みません。私の場合は自分の力量のおさとがしれるばかりです。

エッセイは洒脱で武骨で、平野さんの真骨頂はここにあり、という気がしました。
老いの「七十代になって」は笑いました。自分のことは鏡をのぞいてもわかりませぬ。ハハハ、ほんとおかしかった。

殯の森』の二つ目の生きる話に胸がじい〜んとしました。この映画は観ていませんが、森の情景が見えるようでした。簡潔に描いておられるのに。

<ハイジの長生きを祈りつつ>