かじゅこさんと電話で話す

夫が他界したことをまだあまり人に告げていない。
こんなことを言うと、そう言って下さった方の深い思い遣りを拒絶するようだが、決してそういうつもりではなく、でも本当のことを言わなくては耐えられない自分の気持ちが、この言葉を押し出してしまうということなのだ。


今夜急に、猫ときのこの画家、かじゅこ松島せんに夫の死を告げなくては、と思い電話をした。

彼女は、「あなたは本当によく介護をされた。ご主人はお幸せだったでしょう」と言った。
私は間髪をいれず叫んで号泣した。「やめてよーっ! あなたまでそんな慰めを言うのか! 私はただの自尊で悔恨をしているのではないーっ。ほんとーにあの人をかわいそうな死に方をさせてしまったのよーっ!」と。


すると、かじゅこさんはどっしりと言ってくれた。
「わかってるわよ。マオさん、向こうに逝った人は、向こうで、全てがわかるものになるのよ。仏はそういうことなのよ。ご主人は今、あなたの悲しみと苦しみを全部、見て、わかってるということなのよ」。