猫のミルをみおくる

ミルが昨日の夕方5時半に息をひきとりました。一ヶ月前、夫の死と同じ時期に、食欲をなくし呼吸がおかしいのに気づいて以後病院にかかり薬ものませていましたが、ついに力尽きたのです。

「らくになって、自由になって、自分がいちばん幸せだったところに戻っていくんだよ。私のことはもう気にとめなくていいよ。これまで苦しいのにがんばってくれたね。私のために、私を慰めるために。ありがとね。忘れないよ」と祈った。
ミルはふあふあの真っ白の毛をして、小さい頃はそれはかわいく、その頃の家族の人たちに可愛がられたにちがいなかった。だから、森でみつけたとき、最初は怯えて怯えて緊張で目も口も耳も懸命にとんがらせていた。
でも、私に心を開いた一瞬から、それはそれはひとなつこい猫になった。それは捨てられるまで、愛情をいっぱい受けていたからだろうと思う。
森で息をひそめ、飢えと寂しさに苦しんでいたなか、どんなにもとの家に戻りたかったろう。大好きな家族に会いたかっただろう。
それを忘れたように私と夫と他の猫たち、犬たちの住む家の猫になってくれた。

ある時、帰ってこないミルを探して歩いていたら、別の森の草むらにいた。呼ぶと、さっと振り向き、まりが転がるように駆けて駆けて駆けてきた。森中が清涼な空気に満たされた思いだった。

ミルや、お前が老いてもうこれ以上は生きられないよ、という日がくるまで守ってやりたかったよ。そのつもりだったよ。なんと早い別れだったろう。
でもきっと、懐かしいいちばん好きな家族に会いたかったんだね。命をかけるしかその家には戻れなかったんだ。
どうかもう永遠に安らかでいてね。

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外に出る猫は、このような死を迎えることがとても多い。姿を消したままになってしまうこともある。
事故などのこともあるだろうが、人の手にかかることが多いのを知っている。

猫が庭にフンをしたり、車の屋根にあがることがそんなに許せませんか。
あなたが酒をのみ、タバコを吸い、人の悪口をいい、人をはかり、金品を優先させなどの人間の現代の習性をもったまま生きてるように、猫は猫の習性のまま生きているに過ぎないのですよ。
自分以外のもののすることがそんなに許せませんか。

こうやって人類がじわじわじわじわと蝕まれている気配を、あなたは感じませんか。それほど人間は自分の欲望以外のことに無感覚になっているのでしょうか。