松本清張ドラマスSP「顔」の感想 番外編「絞殺と死刑制度について」

どのドラマや映画でも、絞殺シーンが出るたびに気になるのだが、この「顔」でも、原田夏希が谷原に絞殺される場面がひっかかった。原田の美しさと存在感と演技には感動したのだが、殺される演技はこれまで演じてきた人たちと同じだと思った。
何を言いたいかというと、首を締められる苦しみの形相を誰も表していない、ということだ。(実際に経験のないことを演じるのだから当然であって、批判しているのではない)


実は私は体験があるのだ。
昨年のことであるが、嚥下障害が出始めた夫が、チーズのかけらをのどにつまらせ、窒息死しそうになったのである。この時の苦しみようはそれは凄まじかった。目玉が本当に飛び出ておちるかと思われる血が凍りそうな恐ろしい形相になった。


首を締められるにせよ他の何かでそうなるにせよ、息が出来なくなる苦痛というものはあのようになる、ということなのだと、私は思い出すたびに戦慄する。おそらく「死ぬ」ためには、誰もが想像のできない「苦痛などなにか」を越えなくてはならないのだろう。
余談だが、私は夫のそのことがあってから一層、「命」「生」「死」などについて、言葉にいえない深い思いを感じるようになった。少しずれるかもしれないが、介護をすることを命がけのように、「死なせてはいけない」と思い詰めてしまうのはそこから強くなってきている。


死刑制度についてだが、夫のあの苦しみを見て以後、私は日本の現在の死刑制度の残酷さを思い、制度を見直す必要があるのではないかと以前に増して考えるようになった。
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※犬猫を殺処分にすることを中心にしている日本の動物行政に対しても同じだ。
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※ちなみに夫は救急車が来る前に無事にチーズを出すことができて健在です。