相棒 8-7 鶏と牛刀

出演:水谷豊 及川光博 岸部一徳 川原和久 山中崇史 山西惇 六角精児 小野了 久遠さやか 三井善忠
監督:東伸児


社会保険庁の保身第一主義によって起こされた事件を、右京さん(水谷豊)と神戸くん(及川光博)がいつもの通り鮮やかに暴く。
誰もが知っている例の年金問題にまつわるカラクリとそれによって国民が納めていた年金を上層部が湯水のように使っていた事実を知った年金事務所の係長藤石(江藤大我)が、告発しようとした寸前にホテルの部屋で殴られ窓枠をはずして下に落とされ即死する。
このことが起こる前に、社会保険庁の上層部の三人が、小野田長官(岸部一徳)に、年金の横領を行った藤石の逮捕を先送りにするよう頼んでいる場面がある。三人は年金問題の違法は藤石個人がやった犯罪として済まそうとし、自分たちが指示した証拠を、藤石が逮捕になる前に消そうという算段である。逮捕が先送りになればその間に証拠を消せるのだ。
視聴者はこのドラマの全貌をここで既に知るのだが、それでも実際にあの消えた年金問題の裏側にこういうことはあったのかもしれない、と思わせるものがあるから最後まで目がはなせなかった。それにしてもひどい話で悲しい。


悲しいといえば、藤石は殺された日、恋人にプレゼントを用意して会っていた。恋人のおなかには赤ちゃんがいて、藤石は父親になる覚悟をしてプレゼントをしようとしていたのだ。覚悟の中には、不正を見逃したままにはしたくない、国民を裏切りたくない、という思いもこもっていたのだろう。そうした藤石を、自分と社会保険庁の保身のために平然と『始末』したのである。

藤石の死は一度自殺と断定されるのだが、藤石の恋人(久遠さやか)が、社会保険庁の受付で、「あなたがたが殺したんでしょ、人殺し」と叫び、これを目撃した右京さんが真相をつきとめていくのだ。恋人は、藤石本人から、今の仕事をやめる決意を聞いていた。やめるという藤石に彼女は腹を立てたのだが、死んだ後に怒った自分を悔やむ。

これらの全部を右京さんは見抜き事件を解決していくのだが、右京さんは結構老獪な手段で真実を明るみにする。それに「ついていけねー」感のある神戸くんと微妙なぎくしゃくな距離感も見えそれが楽しかった。


ちなみにタイトルの「鶏と牛刀」は、論語の「鶏を割くにいずくんぞ牛刀を用いん」からとったようだ。小野田官房長がそう言ってましたね。
広辞苑で見ましたら、「鶏を料理するのに、どうして牛を調理する大きな包丁を用いる必要があろうか。小事を処理するのに、大人物または大掛かりな手段を用いる必要はない」という意味らしい。
思うに、藤石の存在を小事、と言ってるのではなく、彼を保身のために殺した上層部の人間の愚かさをいっている、のですよね。
ちがうか、小野田自身が出る必要はない、と自分を牛刀と例えたのか。

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ふと思い出したのだけど、ラスト、神戸くんは変装して右京さんと小野田官房長の話を聞いていた?