ETV特集「ピアニスト・辻井伸行」

今日(22日)、辻井伸行さんがバン・クライバーン国際ピアノコンクールで優勝されるまでの20日間を追った番組を観れて幸せだった。


何ヶ月か前、テレビのニュースで、この優勝の瞬間辻井さんがバン・クライバーン氏に抱きしめられておられるのを観て、『イエスが天の父に抱きしめられておられるようだ』と感じたのだったが、その思いをあらたにした。本当に幸せだ。


実は私たちは、辻井さんのような形ではないが、それぞれいつか必ず、天に抱きしめられた瞬間を得ているのだ、と強く思うものがこみあげた。


私の場合、東京で父親と二人で暮らしていた保育学校に通っていた冬休みに、伯父や従兄弟たちのいる郷里で何日か過ごし、東京に戻るために駅までの40分ほどかかる一本道を歩いている時にそれを得た。
特別な何かをしているとか、人のために尽くしているとかということではなく、たった駅までの道を歩くだけの間天からの手を感じたのだった。
その手は、過酷に定められた私の人生から『恐れ』を取り除いてくれたのだった。
それでもなお己の愚かしさのために私の人生はまるで空中にはられた一本の紐の上を歩くようにおぼつかないが、私があの日の天の手に支えられていることはまぎれもないことだ。

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天の父が辻井さんを抱きしめられたのは、その栄光だけではない。辻井さんがご自分に与えられた天分を疑わず損なわず真っ直ぐに懸命に歩まれた、その過程の全てをであるだろう。