夫の退院は感謝の気持ちとこれからの介護生活に前向きの決意をしつつ家に向ったのであった・・・はずであった。


ほんとに夫にはもちろん私にもいい二ヶ月間であった。帰路はしみじみと感謝の気持ちをかみ締め、穏やかな満ち足りた思いで車を走らせていたのである。
ところが! 一変した。
つくばのある交差点で、私は左車線に先頭で信号待ちをしていた。もう青になろうという時、交差した北側の道路から来た一台のバンが左に曲がったと思うとそこで止まったのである。つまり、私が信号が青になったので進もうとしている交差点で前進を阻まれたのである。結構車が列をなしていて、右車線には何台もの車が走り、急にそちらに割り込めない。私の後ろはたちまち何台も連なって止まっている。


その車は、こちらの事態に目もくれず、次々に人が折り、合計六人の男性が車も横でなにやら話し合っている。
私は、助手席側の窓を開け、夫越しに大声で、「ここに停めるの非常識じゃないですか? 後ろ交差点いっぱいに渋滞してるじゃないですか! もう少し車を前に止めればいいでしょ!」と言った。六人のうちの三人がこちらをみて、「ちょっと」と言いながら頷いた。妙に横柄な感じである。『何様だよ?!』と見るとあるテレビ局の大きなビデオカメラ(?)を担いでいる。『なんだ、あの態度は!』とカチンときた私は、やっと右車線に入りその車の前に出て停め、降りて六人の男たちの方に進んだ。
「テレビ局なの?」
「ああ」とカメラを見せてきた。
「プロデューサーはどの人?」と訊くと、髭面の男がこっちを睨んでいる。
「こんな状況の把握もできない仕事ぶりじゃ、ろくな番組は出来ないわね」
そういつにそう言い放ってやった。


どうもバックを背中にエラソーにしてるやつらにはむかつく。
とんだ退院になってしまった。
車に戻ったら、ぼざぁとしている夫が、「終わったの?」と言った。
「うん、終わった」と答えたが、夫は何が始まり終わった、思ったのだろう。