相棒〜最終回SP 「特命」

毎週楽しかった相棒シーズン7が18日で終わってしまった。その最終回の感想を。(ネタバレになってるかも)
最終回ということは、来週はもう観れないということだけど、ここに新たな相棒が登場しているから、シーズン8があるということですね?


<出演者紹介という形で感想を>
杉下右京(水谷豊)
今回、右京さんはある山村に入り込み、そこで、【聖書の販売】をしていると名乗っている。聖書の販売!? ヘェ〜〜〜〜とびっくりしたが、これが妙に合うんですね。
要するに、右京さんは何をやってもグー! ということ。演技もうまいし。
このドラマはのっけから横溝正史モード、右京さんは名探偵金田一さん、という趣でしたが、とっぷりとその世界を創り上げて盛り上げていて、でもそこには深い人間の根源を垣間見せ、いろいろ堪能しました。


神戸尊(ミッチーこと及川光博
特命に配属された右京さんの新しい相棒、ジャーン! 私にとって寺脇康文は「右京さんの永遠の相棒」として定着しているけれど、新相棒のミッチーもなかなか素敵だと思った。新シリーズの楽しみが倍加した。

右京さんにひけをとらない気障であって気障でないすっとした洗練の男性で、しかも超エリート出身らしい。この新相棒が登場した冒頭の場面で、特命に配属されたのは、これまでのようにおちこぼれだからではなくて、「杉下が警察に本当に必要な男かどうか探ってこい」と任命されたからである。つまりスパイ。
ラストに右京さんに、「腹の底がわからない男」と評されているが、そういう謎めいた神秘の香りもあり、この人を相棒にもってきたのは厚みのバランスもよく正解、と思った。


宮本真希
山村で、障害のある弟を世話しながら清く質素に生きるこのドラマの薄幸のヒロイン。
弟が沢を滑り落ちて動けないまま死んでいるのが見つかるのだが、そうなる前に、それまで常に質実にしゃんとしていたこのヒロインが、「もお〜〜〜」と崩れ座る場面がある。この時、あらわになる脚を隠そうともせず蹲るのだが、瞬間迸るエロスの雰囲気。この演出がすごいと思った。ここでこの、いつもは地味にしてそれが自分だと思っているが、実際は本人は気づかぬが女性として美しく魅力あるヒロインの長年の鬱積の孤独と哀しみがほとばしった。それは雨の中、弟が死ぬかもしれないとわかって置き去りにして帰り、過去に都会でバリバリ働く女性になりたいと夢を持ち買ったスーツを取り出してをかき抱いて泣くシーンにつながり、哀れでならなかった。宮本真希ならではの演技と存在感だと思った。


宮本真希が慈しんで守っていた知的障害の弟(名前がわからなくて)
鬼気迫る演技でこのドラマの”主人公”だった弟。この仔(成人)は、見たものをそのまま絵に描く天性の才能があり、山村でおこった悲劇を右京さんに知らしめ、右京さんを呼び寄せたのは、彼が描いた一枚の絵だったのだ。

多量の血を流して横たわる女性、呆然と立ちすくんでいる女性の夫(前田吟)、傍らで包丁を手にして驚愕の表情を浮かべている前田吟の弟。・・・これらを写真とまがうほど細密に描いた。・・・この絵は、誰しも(右京さんでさえ)弟はこの見たことを恐怖の対象として描いた、と思い込むが、そうではなく、弟は好きなねずみを見たいと思って中をのぞき、この場面を見るのだが、それは背景に過ぎなかった。それがわかったのは、もちろん右京さんの洞察眼が感知した。、絵の中に、小さく描かれていたねぶみの姿をみてわかるのだ。

人々の不安をかきたて、事件を複雑にした、この絵に対する人々の見方を通して、人間は自分にとって見えるものだけを見て決めつけるところに、何の真実を見ていないことのあることを知らせた、このモチーフの使い方にえらく感服してしまった。

ラストに、弟の死にどのような真実が潜んでいるか右京さんが知ったのも、弟が息をひきとる最後に描いたと思われる四枚の絵だった。絵は、姉(宮本真希)の唇からはじまって四枚目はうっすらと悲しく儚げな顔を浮かび上がらせている。そして、唇は、一枚づつ、”ご・め・ん・ね”と言っている。右京さんは、これで、姉の仕業、いや姉の”心”を知るのである。本当に辛い切ないラストであった。


こうして感想を書くと、ドロドロとした閉塞的な世界のドラマのようであるが、右京さんをはじめ、そこここにどんな時でも人間は結構オカシイ、場面があって、決して陰惨ではない。
私は一昨日完全徹夜をしていたので、夕べのこの相棒が全部観れるだろうか、眠り込んでしまわないかと心配だったのだが、睡魔も襲ってこないほど面白かった。