警官の血 第二夜

言いたくないが、これは原作を読むと面白いのだろう。私にはドラマは失敗した、と思えた。


なぜそう思ったかの一番は、要所要所のゆるさ。
例えば、ラストの和也(伊藤英明)と三代の警官を苦しめてきた早瀬(椎名桔平)の対決の緊張感のなさ。
和也が早瀬を追求するそこには、人間の根源的な誇りへの烈しさがあってしかるべきと思えるのだが、伊藤英明からその意味すら見えてこなかった。(彼はこの役には心身ともに綺麗過ぎ)
椎名桔平の演技も、戦争の残酷さによって己を壊されたものの尋常でない悲しみと虚無は見えない。(どうしても洗練人に見えてしまう)だから型があるだけで、早瀬自身が制御できない烈しさがこちらに襲ってくることはなく、単なる利害のからんだ対決のレベルでしかなかった。(演出の責任だと思うけれど)


警察の闇、というけど、人間を性悪説にとらえた、されど個々人は正義を求めていきる、というテーマ(人間観)を、警察を土台にもってきて描いたのだと思う。そういう意味では舞台設定はどこでも通じ、身をもって納得するものはあった。


二代目の民雄(吉岡秀隆)の描き方と演技は、あの時代がもつ繁栄と怠惰の谷間におちて足掻く人間の息遣いを出していたと思う。あの残酷な谷間から這い上がって、父と同じ駐在所で働く民雄が、常にどこかに不安の色を漂わせている、その繊細さが観ていて辛くなった。


それにしても女優陣はみんな素晴らしかった!