裁判員制度

うとうとした後目が覚めてしまい、テレビをつけたら、来年5月からはじまる裁判制度の番組が放送されていた。元裁判官で現在弁護士をされている秋山憲三さんが、「裁判ごっこがはじまるんですよ、冤罪が増えるでしょうね」と語っておられた。


秋山憲三さんは、冤罪事件として有名な、「徳島ラジオ商殺し事件」の犯人とされた、殺された人の内妻、富士茂子さんの再審裁判に尽力した方である。それだけに、これから始まる裁判制度への懸念の言葉は説得力があった。


それにしても、「徳島ラジオ商殺し事件」は恐ろしい。事件の概要は↓の枠を見て下さい。(wikipediaより)
検察は明らかに茂子さんの無実がわかる証拠を隠蔽していたのだという。また有罪確定の決め手になった店員の証言は、後に検察に脅されるようにして行ったものであったという。そして当時9歳だった娘さんが、「覆面をした男が入ってきて、お父さんを殺した」と言ったのに、それはまったく信じなかったという。


茂子さんは、再審請求中に病に倒れ、亡くなってしまったのだが、その病床での弱弱しいだが懸命に振り絞られた声が映像に残っていた。「神様は、無実が証明されるまで、私を生かしておいて下さると思っていた」という意味のことを言われている。だが亡くなられた。
その後、妹さんや支援者によって闘われ、ついに無罪となったのである。


秋山憲三さんは、茂子さんの訴えに耳を傾け、心を開き、真実を感じ取り、再審裁判を起こすために動いた人だ。この人が、「裁判制度がはじまったら、冤罪が増える」と言われる。
秋山さんは、現在の社会に、いかに己の保身のために、勢力や数で強い側になっている者が立場を利用して、巧妙に人を孤立させ、あるいは罪を着せていること等が横行しているか、そしていかに、力のないものや、失敗をするものに冷ややかであるかをよくわかっておられるのだろう。


自分を充分に守る地位にいる人は、それらの横行を見て見ぬふりしていることも出来るし、そういう人が殆どであろう中、こうした発言を堂々とされる。すごいと思う。勇気付けられる。


だが、茂子さんのように無罪が証明される人はごくわずかで、誰にもわかってもらえず、無実でありながら犯罪者とされ生涯を終えた人、死刑になった人は多いのだろうと思う。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BE%B3%E5%B3%B6%E3%83%A9%E3%82%B8%E3%82%AA%E5%95%86%E6%AE%BA%E3%81%97%E4%BA%8B%E4%BB%B6
事件の概要
1953年11月5日の早朝、徳島県徳島市でラジオ商(現在でいう電器店)の店主男性が殺害され、彼の内縁の妻も負傷した。当初徳島市警察(当時)は市内の暴力団関係者2人を強盗殺人容疑で逮捕し、内1人は犯行を自供したが、証拠が無く釈放した。その後ラジオ商の住み込み店員の証言から内妻による狂言であると断定し逮捕した。

冤罪の訴え
1審の徳島地方裁判所は内縁の妻に懲役13年の判決を言い渡した。内縁の妻は控訴したが裁判費用が続かないため取り下げ、1958年5月に刑が確定した。

その直後に店員が検事に強要されて偽証したと告白した。内妻は、模範囚として服役しながら再審請求を始めた(第1〜3次再審請求)。1966年11月に仮出所。姉弟や市民団体の支援のもと再審請求を続けたが、第5次再審請求中の1979年11月15日に肝臓がんのため死去した。