元時津風親方の犯罪

この人は、17歳の少年をリンチで殺しただけではなく、三人の若者を殺人者にしてしまったのだ。
自分の立場を絶対にして、己が何をしているかをわからなくなっている人間はかくも残酷な結果を生む、ということの典型のような人だ。罪を犯した人にたいてい感じるそうなってしまったことへの同情の気持ちはこの人にはおきない。
わずかにおきるとしたら、相撲協会の体質への疑念からだ。


どこの世界も多かれ少なかれ、そして形は違えど似たようなことは起こっているのだろう。


相撲界を自分の夢の生き場所と決意して入門したのであろうこの少年の絶望と恐怖と苦痛と、親のもとにどれほど生きて帰りたかっただろう心中を思うと、そして、「帰って来い!」と言わなかったことをどんなに悔いておられるだろうご両親の苦しみを思うと、静かに祈ろうと思っても、気の毒で気の毒でならない思いがただ騒ぐのみである。