夫のその後2

8日の夕方に行くと、夫はやけにおしゃべりになっていた。同じ病室の方のご家族が見えると、「あの人、だれ?」と手を突き出して訊く。手には点滴の針を抜くのを予防するため、グローブのような手袋をはめさせられているのだが、そのグローブ状の手をその人に突き出すのだ。


「失礼でだから」とたしなめてもかまっちゃこっちゃない、という傍若無人さで、「だれ?だれ?だれ?」と大声で言うのである。
若い女性の看護士さんが見えると、「○○ちゃん、うちに遊びにきたんかな」と郷里の訛りでにこにこと嬉しそうに訊く。
○○が誰と言ったのか聞き取れなかったのだが、郷里の家にいた頃に戻っているのだろう。
それにしても賑やかだ。どうも躁鬱の躁状態という感じだ。


ベッドから無理に降りようとするし、まだ口から飲食はできないのに、コーヒーが飲みたいとだだをこねる。
私の方が疲れきってしまった。7日締め切りの原稿もあるし、「帰るね、明日の朝来ますからね」と立ち上がりかけると、弾丸のように何かを聞いてきた。まったく聞き取れない。本人も確かなことは言ってないのだろう。ただ帰られたくないから質問をしている、という感じだ。


でも夫のペースに引きずられていては本当にこちらが参ってしまうと、強引に病室を出る。
さて、仕事にかかろうとしたが、眠い眠い眠い。風邪気味でもあり、咳き込みも出てしんどいしんどいしんどい。
明日、早く起きてかかろう・・・。