雨のしょぼ降る夕暮れ時の大蛙

昨日の夕暮れ時は雨がしょぼ降っていた。

私は車でいつものように猫たちにご飯配りに。

だが道はいつものようではなかった。

啓蟄を過ぎた雨の夕暮れ時は、蛙さんが道いっぱいにひょうひょうと散らばっている。

こういう時は小道は避け大きな道を選んで通る。小道では蛙さんを避けられないからだ。

左手は山、右手は畑になった道の真ん中に両手の拳を合わせたくらいの塊があった。

石だと思った塊が動いているように見えて、車を止める。

大きな蛙さんである。道の真ん中をのそのそしている。

これでは車に轢かれそうだな。

貧乏症の私は素通りが出来ず、車から降りてそばに寄ってみた。

両掌もの大きさである。

遠くから車のライトがこちらを照らしてきた。そしてぐんぐん近寄ってくる。

やっぱり避けないと危ない、と両手で掬いあげ、山側のほうのどこに置いたらいいかうろうろしていると、車はあっという間にそばにきた。

行きすぎるかと思った車は停車し、ライトをつけたまま人が降りてきた。熟年風の男性である。

その人は、「何か捨てようとしているんですか。捨てちゃいかんでしょ!」と咎め立てた調子の声である。

「捨てるんじゃないんです。どこに置いてやったらいいかと思って」と答えつつ、ライトの前に大蛙を見せた。

「ギャーっ!」

驚いたことにその男性は悲鳴をあげた。私もその悲鳴に驚いたのなんのって。

「こ、子猫でも捨てようとしてるかと思ったよ」

「子猫じゃないですよ」

「わ、わかったよ、見たんだから」

結局その男性もどこに大蛙を置いたらいいか考えてくださり、雑草のこんもりとある柔らかな土の平地に置いた。

問題はこの後である。

その人は、車に戻る前に、ちょっと言いよどんでから思いきったように私に訊いたのである。

「おくさん、間違ったら悪いんだけど、ほら、あのS地のSさんという人? 犬猫たくさん飼ってる」

「いえ、私、S地のSさんじゃありません。N(旧姓)さんです」と言ってさっさと離れた。

(なんか、違和感ある言い方した気がする・・・)と思ったが、そんなことより、うっかり、「そうです。おっしゃる通りの者です」なんて答えてごらんなさい、明日には絶対犬か猫を持ちこまれる。

今以上の数を私に飼えというのは「お前なんか死ね!」に等しいのです。ここは自分の知恵で避けるしかないのです。・・・でもどうも知恵者の対応とはほど遠かったような・・・と一日経った今。

≪別ブログより転載≫