日曜洋画劇場 松本清張SP「ゼロの焦点」

自分の作品を引き合いに出してはなんだけども、20年前にはじめて出版された「風のむらから さわこ」(挿絵:下の記事に登場のカキヤオリエちゃん 汐文社出版 絶版)という私が書いた本に、主人公の少女が戦地から帰還した父親の精神不安定を一身に受けつづけ、また父親の抑圧を耐えながら唯一の希望としていた継母の生む赤ちゃんを待ち望むのだが、早産で生まれた弟はお母さんのお乳を飲めないまま生後三日で衰弱死をし、その一ヵ月後に継母は死んだ赤ちゃんを追って入水自殺をするという出来事の後、言葉が出せなくなる場面がある。

この場面で、父親が戦友と、「戦争は一度起すと決して終わらない。全ての人を巻き込みながら永遠に続く」とうめくように語り合う。
私は敗戦の時三歳であったが、翌年父親が帰還して以後、父の戦地での精神的な傷を受けさせられ続けた。そのことは、小学生で、“戦争は一度起こったら永遠に続くのだ”と感受させてきたのだ。

今夜観た映画「ゼロの焦点」もまさにそういう映画であった。
広末涼子中谷美紀木村多江の好熱演に引き込まれた。
特に雪の崖の木村多江中谷美紀の悲しい場面には鳥肌が立った。
中谷美紀ヒッチコックの映画のなかのヒロインのような、鬼気迫る華々しい存在感があって、すごかった、としか言いようがない。ほんとに、すごかった。面白かった。