相棒「聖戦」を観る

主婦らしい女性が公園でブランコにのって漕いでいる。彼女は誰かを待ってるかに見える。ブランコから降りると、いかにも手持無沙汰な様子でベンチに座りビスケットを齧る。と、「あ」という感じで双眼鏡を目に当て、ある住宅の部屋をのぞくと、その部屋に向かって右手を差し出す。そこにはリモコンが握られている。そして右手の親指がリモコンのボタンを押す。大きな火花が飛び散り爆発が起こる。満足そうな高揚を見せる女性。・・・南果歩が、この凶悪な爆弾殺人犯に扮し、迫真の演技で最愛の息子を事故であったが殺され復讐をする物語を展開していく。

その展開は右京さん(水谷豊)と神戸くん(及川光博)の謎解きよりも、犯人南果歩の息子への愛情の深さと、死んだ後に犯人への復讐心が何がきっかけて烈しくなっていくか、また復讐への入念な準備がじっくりと描かれていき、究極の母性の形が浮き彫りになるのだが、一見ベビーフェイスであどけない顔立ちの南果歩が、内面の凄絶なカオスをにじませて、怖くもあり悲しくもあった。

ただ南果歩が右京さんたちに追いつめられるようにして息子が好きだった山小屋に行くのだが、このあたりから後はなんともとってつけたような空々しさで、どうしたんだろ?と首をひねってしまった。