ショーケン

私は若い頃からショーケンに好意をもっていた。まわりじゅうがジュリーに夢中だった時もショーケンを見ていた。といっても音楽性がどうとかというレベルではなく、もっと単純に素朴に、ショーケンは他の誰とも違う感じがする、という気持ちだった。そして、彼が結婚をして幸せそうだと嬉しかったし、悪い出来事があると心配をした。

そういう視線でショーケンを見てきたが、何年前だったか、映画か何かのプロデューサーとトラブルがあって、裁判沙汰になった出来事があった時、ショーケンがとても険しい悪相になっていると感じて、驚きととも応援する甲斐がないと思うほど気が滅入った。
ただ彼が、警察に留まっている間、猫が心配だったというようなことを言われていて、そのことが何か胸のなかにポチっと残っていた。


あれから、ずううううっとショーケンのことは誰も何も言わなくなり、私自身もいつの間にか忘れていった。
それが昨日だったか、久しぶりにショーケンがテレビ画面に登場された。
芸能リポーター梨元勝さんの死に関して取材を受けておられる姿だった。

私は「あ」と声を出すほどショックを受けた。ショーケンの表情が美しかったからだ。そして秋元氏に対する言葉にもショックを受けた。
「彼も傷ついていたのでしょう」。


ショーケンは、何か出来事があった時、リポーターたちに見せる表情も言葉も挑戦的だった。このウジ虫メらが・・・・・という言葉が聞こえてきそうなほど究極の不快感のともなう怖い視線を投げかけておられた。
私はテレビのこっち側で、当然ショーケンの味方をしてリポーターたちを蔑視した。


そのショーケンが、思いやりを深く湛えた視線を取材者に向け、「梨元さんも傷ついていたと思いますよ」と静かに穏やかに言われたのだ。そこに我慢や本音を隠したという偽善性はまったくなかった。



私は今、多くをほしがらず、捨ておかれていく猫や犬を必死で守ろうとしているだけの暮らしなのに、なぜいつまでも闇につきまとわれるのか、と生きる甲斐も忘れそうになっているのだが、生きていると、こうしてどこからともなく光がさしてくるもんなんだなぁと、そんな思いすら覚えた。人がごまかしでなく立ち直った姿は、ほんと、光そのものだ。