再放送 相棒「黙示録」

独房で死刑囚が病死する。この死刑囚は25年前の放火殺人の罪をかぶせられていた。

刑が決まる頃には死刑囚が冤罪であることにうすうす気づいていた、逮捕した刑事、取り調べた検事、当時新人で自分では冤罪ではないかと思いながらも、どうすることもできなかった裁判官(石橋稜)と、息子の無実を信じていた死刑囚の父親(林隆三)が織りなす重い物語である。

刑事と検事は殺され、死刑囚の父親が疑われるなか、杉下右京(水谷豊)と亀山薫寺脇康文)が真実を解明し真犯人もわかるのだが、そこに辿り着くまでに右京さんは違法捜査をして結果的に裁判官を退職に追い込むなど、きれいごとのレベルに留まるまいとする気迫のこもったドラマだと思った。現実はここに描かれた検事や刑事や裁判官はいるわけはないだろうから、そういう意味ではきれいごとであるが、監督や制作側の精神は十分理解でしたし、キャストそれぞれの熱演は真実味をみせてくれた。


それにしても、冤罪で自分の全てを失う人生のむごたらしさは、どう言葉で表わしたらいいのだろう。私など、友人の顔をして積極的に近付いてともに何らかの活動をした人間に、自分の想像力ではとても思い浮かばない作り話の数々をまことしやかに流布されたり、指導的立場の人の自尊心を傷つけた一点で、一挙手一投足を歪曲された恐怖の経験があり現在も続いているが、その痛みだけでも生きている甲斐がないと思うほどになる。


冤罪の影響力の強さを知って、他者を貶め立っていく力を奪い尽くす人間の罪ははかり知れず重いが、今回のドラマの中で、一番罪深い人間は、死刑囚の教戒神父であろう。あの神父自身もそう言っていたが、自分に課せられた罪を受け入れられない犯人に対して、「罪なきまま殺された人間がいる。イエス・・・・・」と言い、犯人を抑えた罪は、殺人者や誤って裁判にかけた人々の罪よりはるかはるか重い。私は神父がそれを告白するシーンで、息がつまりそうになった。