カラス

どこの世界にもはぐれものはいて、私のいくところについてくるカラスもはぐれカラスに違いない。私のいくところにと言っても森の猫たちの食卓に限定するのだけれども。

最近このはぐれカラスが、午後の二時前後になると、私がいつもいる部屋の窓から見える、お隣りのガレージの屋根をピョコピョコと歩きながら、網戸越しに私の顔をとらえると、「ハラヘッターカーァ、フードクレンカーァ」と言うのである。

今日はほかに二羽もいっしょである。
「しょうがないなぁ、めんどくさいなぁ、用事あるのにィ」とぶつぶつぼやきながらビニール袋にほんの少しキャットフードを入れて外にでる。すると私の頭上を三羽がとびかって森にすすむ。

はぐれカラスは私の古い友人格になっているから、一羽だけ特別の木の枝に止まる。ほかの二羽は、森の入口の山栗の木の枝に止まって私を見下ろしている。
この二羽は、両親だろうか。カラスは親を大事にすると聴いて、そんなことを思いながら二羽を見上げる。
それぞれの木の下にフードをパラッとまいて家に帰るのだが、途中振り返ると、それぞれの場でカラスたちはツンツンとそれを啄んでいる。