龍馬伝「暗殺指令」

うっかりして途中から観ることになってしまった。岩崎弥太郎香川照之)の祝言の場面からである。まずは、「弥太郎さん、おめでとうでやんす」。いつも悲痛な目にあってばかりの弥太郎さんのるんるん姿、なにやらほっとしました。もっとも今回もラストでは吉田東洋田中泯)の弟子から、「龍馬を殺せ!」と責められ(東洋が命じたのではなく、この弟子の個人的感情によるもの。まったくいつの世もどこにでも形をかえてこういう妬み嫉みの人間はいるものです。本物は常にこういう敵に苦しめられる)またまた悲痛極まる顔になっていましたが。

武市半平太大森南朋)も、龍馬(福山雅治)に、「吉田東洋を殺せ、殺してくれぃ〜〜〜〜〜〜!」と迫る。武市は国をおもう意見を吉田に提出したが無視され、ついに門弟をひきつれて東洋に直接意見を言いに行ったのだ。だが「小物」と罵倒された上に足蹴にされる。傷だらけになって泣き喚く半平太。龍馬に、「東洋を殺してくれ」と迫る半平太の心情は、国をおもう大志ではなく、門弟たちの目の前で貶められたことの悔しさ、恨み、憎しみであったろう。そういう人間を全身で演じているこの俳優の凄さに緊張した。


これに先立ち龍馬は長州に行って久坂玄瑞に会う。龍馬はこうやって、土佐の内で沸騰してどうにもならなくなっている武市たちのステージをはるか高くに出て広い視点で日本を見ている。言葉の上で、武市たちと合う部分はあるのだが、「なにか違う」と苦しんでいる。
福山雅治は、そうした龍馬の魂の基本の部分を、ひょうひょうと演じていく。後に龍馬が確かなものをつかみ、確かな行動になっていくとき、ここでためているエネルギーがどのように爆発していくのか、想像するとゾクゾクする。