坂の上の雲「青雲」

原作:司馬遼太郎
出演:本木雅弘 香川照之 阿部寛 菅野美穂 松たか子 原田美枝子 竹下景子 伊東四朗 小澤征悦 高橋英樹 宝田明 

秋山真之本木雅弘)と正岡子規香川照之)は東京の大学予備門に合格し互いに勉学に励む。ここで後の夏目漱石小澤征悦)たち時代に影響を与える若者たちと出会う。質素を信条として貧しいがパワフルで疑いを知らぬ毎日を送る。そんな中子規の妹の律(菅野美穂)が上京し、嫁ぐことを告げる。やがて真之は海軍に入って生計を立てる決意をし、子規に手紙を残して広島の江田島に行く。子規の内部に芽生えていた文学(俳句)への希求がこのあたりから明確になったのだろうか。真之の兄の好古(阿部寛)は、世が世なら殿様である松山藩主の子息とともにフランスに行ってくれと依頼をされ、それを受ける。
こうして三人の運命はそれぞれの意志も含めてかわっていく。まさに「青雲」の章である。
演出は、いくつかの若者たちの全力で駆けるシーンをもって、彼らの青雲の志をあらわし清清しい。
特に、女は親の面倒さえみていればいいとする不幸な結婚を経て実家に戻っていた律が、訪ねてきた真之と入れ違いになり、舟の出る浜まで懸命に駆けて真之を追う姿は感動した。緑の草に覆われた真っ直ぐの小道を、律が脚もあらわに駆け抜けてゆくのだ。
そして、浜で再会をし、万感の思いをもって、律は言うのだ。「一身独立やろ?」。一身独立とは、真之が福沢諭吉の学問のススメからかって語った言葉である。律はその言葉をひそかに感銘をもって胸にひそめていたのだ。
「そうや、女子も一身独立の生き方ができるんや」と真之もまた万感の思いで応える。
美しく強く優しいシーンだった。


このドラマは批評などでは、国家が主人公、などと書いている人がいるが、私は思うに、一身独立のドラマであろうと感じている。現代に通じるものとしてか、あるいは、このまだまだ不自由な時代こそ、人々は個をもった自立の意味と価値をわかっていたと描きたいのか、どちらであるかはわからないけれども。・・・多分どちらをもであるだろう。私はここの視点をもってこのドラマを最後まで楽しみたいと思う。

視聴率 19.6%