歯と排便

退院の二日前だったか夫の前歯の一本がないことに気がついた。夫は前歯が四本残っていたのだが、そのうちの一本がなくて歯茎が少し腫れていた。『歯が抜けたんだ』と思い、ベッドのあたりをくまなく探してみたがない。『もし飲み込んで肺の方に入ったらヤバイんじゃないかな』と思いつつ看護師さんに報告をした。
早速レントゲンが撮られて、肺に入った形跡はないので、胃に入ったとしたら心配ないから、ということであった。


こうして退院をしたのだが、実は私はこの”歯”がずううっと気になっていた。以後夫の排便がないのだ。毎日病院で処方されていた下剤を注入しているのに出ない。
ショートスティの施設で一泊した時もこのことを職員さんに伝えておいた。それでここでは入浴の時、腹部のマッサージをして下さったそうである。すると少し出たそうである。でも充分ではないとのことであった。
ショートスティから帰った昨日も少しづつ出るのだが出たとはいえないほどの量であった。


『胃に歯が入ってる場合、夫のような状態では歯を出す力がなく、いつまでも中に留まり、それで便も出ないのではないだろうか・・・・・』と相変わらず私はひそかに気にしていた。


先ほど、朝の四時頃のことである。夫の様子を見るため起きると部屋が蒸し暑く、夫が寝苦しそうにしている。「おむつを取り替えてまた一眠りしましょう」と声をかけ取り替えたのだが、この時、歯が出ていたのである。やはりこれで排便が滞っていたのだと思える塊になっていた。
「おー! これで安心!」10日かかってやっと出た歯。『おつかれさまでした!』と言いたい心境であった。


窓を少し開け早朝の空気を入れて、今、夫は気分よさそうに眠りにはいってくれた。
まずはめでたしの今日のスタートである。



ただひとつ気がかりがある。猫のバンタと森で彷徨っていた白い長毛猫の避妊手術をしそのまま我が家の末っ子猫になったミルクが、夕べ外に出てしまってから帰っていないこと。それといつも食事時にはやってくるブチコとニャンタもそろって昨日から姿がないことだ。

でもきっと何事もなくみんなそろって姿を見せることを信じていましょう。


※9時前後にみんなの無事を確認! バンタはケロリと帰ってきてごはんをいっぱい食べて熟睡中。ミルクは森の奥の方からトコトコ出てきて私を見るとニャアニャアニャアニャア。今夫のベッドで熟睡中。ブチコとニャンタはメリーの家の庭にいた。「ヤアヤア」「ニャンニャン」と挨拶を交わした。