今夜は妻夫木聡 Day 「天地人」「どろろ」

天地人 泣き虫与六
強制的に喜平次(後の上杉景勝北村一輝)が修業する寺に小姓として行かされた与六(後の直江兼続妻夫木聡)は、なかなかその現実を受け入れられない。受け入れられないということは、喜平次に対して敬意も親しみももてないということだ。「わしはこんなところに来たくなかった。喜平次さまの小姓などになりたくなかった」と反発の言葉を叫んだりする。それを寂しく思う喜平次。


そしてついにある雪の夜、与六は寺を抜け出して家に帰る。冷え切って疲れきって戻った与六を、母(田中美佐子)は抱きしめる。だが、母はすぐに我にかえり、与六の将来を思って心を鬼にし、雪の中に息子を放り出す。泣く与六。泣きつかれた後、歩く元気もなく雪の中にしゃがみこむ。


そこに心配して探しにきた喜平次が現れ、「歩けない」という与六に背中を差し出す。『おぶってあげるよ』というのだ。背負われる与六。戸の隙間から一部始終を見ていた母は手を合わせ泣き崩れる。(田中美佐子を、これまで、現代的な皮肉屋と感じていたのだが、胸を打つ熱演で見直した)


雪の夜道をとつとつと話しながら寺に戻る二人。喜平次は、「私のところにいてくれ」と言う。「自分は言葉に出すのが苦手でほかのものとなかなか打ち解けられないが、与六になら何でも話せるように思う」という意味のことも言う。そして、与六が泣いた後、「泣くと気持ちがすっきりしただろう」と言い、それに対して与六が、「喜平次さまも泣くのですか」と問うと、「上に立つものは泣いてはいけない」と答える。
この言葉に、与六は、おぶわれて喜平次の首にまわしていた手をしっかり握りなおし、「与六は、喜平次さまのそばにずうっといます」と言うのだ。
こども心に、喜平次の孤独を受け止め、深いところで人間としてつながったのだ。その感じを、二人がよく出していて、見ごたえのある場面だった。


どろろ
何十年も前に、手塚治虫の原作を読んで以来心に残っていた作品だった。それでこの映画が封切られた時観たかったが、夫の介護などの事情で観ることはできなかった。
今夜やっと観れた、というわけだ。
ファンタジーな映像で、原作の深みは出ていなかったがなかなか楽しめた。
続編はもう封切られているのだろうか。