ゴンゾウ〜伝説の刑事 3話

ぐっといい感じに動き出した。女性刑事とヴァイオリン奏者の女性が銃撃されたあの雨の夜、近くにホームレスのダンボール小屋が並び、その一軒に銅像のように誰とも口をきかないロダンと呼ばれていた男(金田明夫)がいた。
今週は、その男の視線から事件が起こった時の状況を描いている。

ゴンゾウこと黒木(内野聖陽)は、ロダンの口を開かせる。彼はあの夜犯人は自分の小屋にひそみ、彼を脅したというのだ。しかも似顔絵が出来るほど犯人の顔を鮮明に記憶していた。ゴンゾウは大変な手柄である。これまで見下していた刑事たちも見直す。

ただ一人佐久間静一(筒井道隆)だけは、ロダンの様子を冷静に窺い見る。佐久間はロダンの小屋に入り、一冊の雑誌を見つける。ロダンは雑誌の中の若い男性の顔を言っていたのだ。その頃、ゴンゾウロダンの妻と娘のいる住まいに行き、ロダンが戻れるように話すつもりだったのだが、妻と娘から、「前にも自分を気遣ってもらいたくて同じようなウソをついた」と聞く。急いで警察に戻るゴンゾウ。そこには既に全体に真相が広がっていてゴンゾウの立場はなくなっている。

これらと平行して、先週自分を信頼していた元麻薬患者を裏切った高橋一生刑事、その時怒った元麻薬患者に刺された綿引勝彦刑事、のそれぞれの心の機微が描かれていく。

刑事ドラマというより、それぞれの人間の胸板の内の断層を文学的に丁寧に顕わしていくドラマだ。サイボーグと呼ばれている佐久間が警察カウンセラーの精神科医(大塚寧々)と関係があったらしいこと、ゴンゾウを立ち直らせようとしているのは、必ずしも上司としてのヒューマニズムのためばかりではなさそうな展開など、有能な人間が集まったところにこそ生じるだろう生々しさも独特の洗練で描いてますます面白くなりそうだ。
監督は「相棒」の監督もしている人ですよね。橋本一さん。人間の描き方が全てに意味があって緻密ですよね。

内野聖陽は純朴さを失わずにいるゴンゾウ像を創り上げてすごくいいなぁと思う。筒井道隆は、一回目の時から期待を感じたけど、その期待以上にいい。穏やかな紳士的なたたずまいに見せながら、あのスーツ姿にナチの軍人の匂いをどこかで微かに漂わせていそうな、そんな色気がある。(※ある種の危険性を潜めた人間を、隙のない制服を着込んだ姿で表すことが映画やドラマであるが、そういう意味を含めての)