本の紹介「動物だいすき!4」より 林利美作:ノラ猫ハナの花畑


創作は10作 コラムが4作です。
その中から、林利美さんの「ノラ猫ハナの花畑」をご紹介しましょう。

動物が苦手なユウカのお話です。
ユウカは幼稚園の時、犬の頭をなでようとしたことがあるのだが、その犬が突然前足をあげて飛びついてきて、泣きながら必死に逃げた。それ以来、どんな動物もさわることができないのだ。
それでユウカは、動物が苦手なことをなんとなく引け目に感じている。誰かに、動物が苦手なことで、「冷たい」など言われたわけじゃないのに気になるのだ。


そんなユウカは、ノラ猫のハナがいるところにいきあう。ともだちのミドリは、ハナをなぜるがユウカはできない。そして翌日、ハナが川の向こう岸に横たわっているのを見つける。ミドリは橋を渡ってフェンスを乗り越え川岸に下りてハナのところに行く。
「大けがだよ、うしろ足、折れてるみたい」とミドリが言う。ハナは、小さい声で、「ミャー」と鳴いた。
ユウカはハナのそばに行けない。家に帰ってハナにやるごはんを持ってくるが、下には下りられない。ミドリはハナの身体をさすったりする。ユウカは、(わたしって冷たいのかな)と気になる。

ハナは三日目に死んでいた。ユウカはハナになにもしてやれなかったことが悲しい。
でもミドリが言うのだ。「わたしたち、がんばったよね」ミドリは、「さわれなくたって、いいじゃん」とも言う。
ユウカは体の力がほぐれるような気持ちになって、ハナのためにハナの最後のところにお花を咲かせようとする。
二人は、コスモスの種をまくのだ。
「ハナ、天国に行くんだよ〜」と叫びながら。

短い物語ですが、動物が苦手なユウカの葛藤と、動物が好きだから優しいとか、嫌いだから冷たい、と決め付けて枠に入れるのではない、ユウカらしい優しい心がよく描かれていて感動します。
そして、ノラ猫のハナは薄幸でかわいそうでしたが、二人の少女のあつい思いに包まれて命を終えたことが、とても救いに感じ、深みのある作品だと感じました。
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日本児童文学者協会=編  藤田ひおこ=絵  岩崎書店  1000円+税