迫り来る原発の真の危険性と、不明瞭な保安院の会見=ジャズピアニストW氏の発信

迫り来る原発の真の危険性と、不明瞭な保安院の会見:W記
テレビをつける度に、政府側の原発の事故状況を会見する立場の人間として、枝野官房長官とは別に連日、原子力安全・保安院の西山英彦審議官がメディアに登場します。


正直、同氏の会見も含めて、今までの保安院の会見内容には、まるで中身がありません。放射線に関する記者からの専門的な質疑応答では、如実にちぐはぐさが目立ちます。


震災直後の会見においては、驚く事に放射性物質の単位である基本的なシーベルやベクレルを読めない一部の保安院職員がおり、その一部始終がテレビの前で露呈したり、測定した放射線値の単位の時間軸が、毎時なのか毎秒なのかさえきちんと答えず、被曝線量の大事な値がうやむやにされたまま発表された事も、ままありました。


さすがに記者達からは、あまりのその専門性の無さから、「果たして、これで原子力行政の安全を担う専門機関としてよいのか?」という疑問と不信感の声が、徐々に湧き上がってきていると伝えられてきております。


いってみれば、その場その場での会見用に用意したメモを、おうむ返しに述べる事に彼らは終始してます。


そもそも、原子力安全・保安院とは、経済産業省の傘下における原子力行政の専門的な認可監督機関であります。ただし、その実は監督機関でありながら、管理職以上のトップなどは概ね専門的知識は甚だないに等しい、原子力機器や放射性物質の知識の無い、素人の役人集団です。


そもそも原子力行政は、2001年の中央省庁再編前においては、旧・科学技術庁と旧・通商産業省の両省庁が主に所管監督し、原発の安全面については旧・科学技術庁がかなりの重要な部分を担い、反面、原子力推進面においては、旧・通商産業省が担ってきという、両省庁の互いの領分と性格を良く現した、歴史と経緯がありました。


それが先の中央省庁再編後は、試験研究用原子炉等の一部の安全面を現在の文部科学省が僅かに承継したのみで、その他の多くの原子力行政については、新たに設置された旧・通商産業省の流れを組む、経済産業省傘下の原子力安全・保安院が一元的に所管することとなりました。


そして奇妙な原子力行政の構図が構築される運びとなりました。
原発の安全面の監視や規制を行う事と、全く異なる推進を行う事、まさしく相異なる事が、同じ省庁で行われる事となりました。
結果は歴然です。経済、産業の推進成長を国家使命として仕事を行う経済産業省が、原発における規制と推進、どちらを重きに置くかは言うまでもありません。非常に憂慮する、残念な仕組みです。


また保安院はその設立後、しばらくは監督機関として検査業務(全て丸投げでしたが)も行ってましたが、2003年10月1日以降は新設された独立行政法人原子力安全基盤機構に業務が移管され、いよいよもって原発事務屋のトップ権力機関として君臨し、単にハンコを押すだけの事務屋に徹しております。


そんな集団が、いよいよの緊急の状況でも、依然として権力機関としてしゃしゃり出て、事故対応会見を取り仕切る。
何をいわんか・・の姿なのです。


余談ですが、近年は保安院自らが、専門的知識の無き人材の多さに気づき、ようやく原子力機器や放射線管理の実務を知る、メーカー等での実務経験者の社会人を若干採用する様にはなりました。


この様な機関が、日頃、原子力発電所における認可監督としての権力を傘に、ある時には大企業・東電等の電力会社を平伏せさせ、ある時には本来求められるべき中道的な立場でありながら、日本津々浦々に原発推進を図る姿勢をも露骨に見せているのです。


正直、私から見ると彼らは、ここにきての緊急事態においても「東電には事故の余計な事は言わせない」というスタンスを、垣間見せている様でもあります。


ここで簡単に、先の会見を取り仕切る西山英彦審議官(54)の公的に紹介されている経歴を記します。

1980年 東大法学部卒業 通産省入省
1984年 ハーバードロースクール修了
2001年 通商政策局課長
2006年 大臣官房総務課長
2009年 通商産業政策審議官


見事な経済産業省の、文系エリート官僚です。


ジェトロの主催する会議等では講演者として活躍され、つい最近の2011年1月28日においては、「アジア太平洋地域の経済連携を展望する〜日本APECを終えて〜」のイベント等で、経済産業省通商政策局審議官(総括担当)として、壇上で経済講演をされてます。

※参考URL
http://www.jetro.go.jp/jetro/topics/1003_report3.html

http://www.iist.or.jp/j/contents/asia/monthly/044/44th-monthly.html


それが、この一ヶ月半後には場違いな原子力安全・保安院の一員として、連日、広報?の様に震災後、原発事故の状況説明会見にメディアに登場しております。


この経歴と、震災から続く不明瞭な事故会見を見るにつけ、私はつい、思わずにはいられません。政府はこの緊急事態を何と心得ているのかと?


西山英彦審議官を責めれるつもりは毛頭ありません。役人ですから、傘下の関係機関への転出、異動出向は日常茶飯事です。
ただし、問わずにおれないのは、明らかに経済畑の彼を、原発の事故状況の説明会見担当に担ぎ出し、掛かる緊急事態の重要度を計りしれない政府の無神経さと、情報規制を感ずるにはいられない、あえて言えば狡猾さに他ありません。

※参考
海外メディアに紹介された事故後の西山審議官の会見、我が国の原子力行政の見解が垣間見えます。
http://jp.wsj.com/Japan/node_208551

いまこそ原発の規制と推進の仕組みを再考慮し、政府の原子力への安全面での真摯な姿勢が問われる時と思います。そして、国民が納得する、誠実なる原発事故状況の明確なる対応説明と、今できうる限りの最善の放射性物質の生態系への対策を、提言して欲しいと思います。


特に福島原発3号機に関する情報は、隠蔽はもっての他です。非常に高い危険性をはらむプルサーマル運転であり、MOX燃料を使用してます。あってはならない事ですが、危険なプルトニウム239の漏洩が一番に心配されます。
因みに、プルトニウム239は「地獄の神」(プルートー)を名前に冠している通り、大変危険な物質です。強い放射能天文学的な半減期2万4000年、ダイオキシンと共に、人類が創造した最低最悪の物質の一つで、原爆の材料にもなります。


そして今一番に望む事として、現在起こっている放射能の汚染事実を包み隠さず会見し、後日対応が遅れ、多大な更なる被曝被害者を生まない事を願ってやみません。
全ての国民の健康安全を第一に。

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Wさん、調査、記述に大変な労力がかかっただろうリポートをお送りくださりありがとうございました。
読み始めて最初、価値ある貴重なリポートとわかりながらも、西山審議官の個人攻撃に終始しているのなら転載はできない、と思ったのですが、そうではないことがすぐにわかりました。


『問わずにおれないのは、明らかに経済畑の彼を、原発の事故状況の説明会見担当に担ぎ出し、掛かる緊急事態の重要度を計りしれない政府の無神経さと、情報規制を感ずるにはいられない』まさにこの疑念、落胆、怒りは、国民の皆さんへの安全を願う一点を見つめていらっしゃるところから発しているのだと理解できました。