20世紀少年〜最終章 ぼくらの旗

人間の幸・不幸を決定する絶対的なものって、この映画で表現されている最も素朴な心の傷だというところで本当に共感を覚えた。
人間の殆どは、自分にとって最も深い傷を胸の底に沈めて、大人になるに従い傷の記憶を薄れさせていく。まるで、根源の傷を芯にして、その後にもおこる悲しみや怒りや不満などを毛糸を丸い玉にするように巻いていくのだ。そして芯の痛みは消えていったかのようにしてしまう。

だけど消えるわけはないのだ。ただ次々に巻かれる毛糸で見えなくなっているだけなのだ。
人によって、誰にもみえなくなっているはずのその芯の痛みが、どうにもならないほど自分を蝕み、ついには自ら毛糸を命がけでほどいてしまう。


多分、二十年前だったら結果主義の世の中でこの映画はそれほど人の心に残ってくることはなかっただろう。
今、人の共感を得るというのは、こうした心の芯にあるものこそ人間の核に影響するのだとわかってきたからではないだろうか。
私個人は、そのことに癒される思いをもった。