大木


裏のおばあさんのお宅に時々見える別のおばあさんが、先日、我が家の物置の横にはえている写真の野生の木を「切れ、業者がいるかた頼め」と言ってこられた。私はかねがねこの木が近隣のお宅に迷惑をかけているので気になっていたものだから、そのおばあさんは、近隣の方の声の代弁者で「切れ」と言われているのだと思い、「わかりました、切ります」と答えた。

そして業者の方というのはどこの会社で、どのように打ち合わせをしたらいいのか訊ねた。
この時点で、そのおばあさんは誰の代弁者でもなく、業者に頼まれて、木を切る予約をとろうとされているのだとわかった。
困ったことに、いくらになるのかなどの肝心のことがさっぱり要領を得ない。「2、3万だ」と言われるが、そんなはずはない、と素人の私でもわかる。なにしろ木は二階の屋根を超えた大木なのだ。何年か前に、物置の横にかわいい木がはえてきたと思ったら、次に気がついた時には私の手にあえなくなっており、とうとうとんでもなく大木に育ってしまったのだ。

聞くとクレーンでつりあげて切るといわれる。クレーンを動員しての仕事に2,3万円で済むわけはない。おばあさんは、「いんだいんだ、そんなこと決めなくたって」とうるさそうに言われるのだが、私はくいさがる。「そういうわけにはいきません。こういうことは、いくらかかるとか、段取りはちゃんと互いに納得しあっておかなくては無駄なトラブルのもとになる。私はそんなことで煩わされるのは困る」とはっきり言った。

翌日、業者の社長という人が来られた。
きちんと必要なことを書類にして出してほしいと言ったが口約束で大丈夫だ、約束は守ると明言される。
これは詐欺をしようなどというのではないのだ。この地域の仕事はおおむねこんなものなのだろう。
「でも、私は口約束では困る」と言い切り、そして時期を冬にしてほしいと言った。
その理由は、冬なら葉が落ちるので、作業がやりやすく、少しでも大げさな感じになるのを防げる、と思ったことがひとつ。葉が多ければ、夏は窓の開いている近所に葉が入ったり毛虫がおちたりするだろうと思ったのだ。
そして、冬は窓が閉まっているから、犬の騒ぐ声や作業の音がある程度避けられる。
もうひとつ大きな理由は代金の支払いに都合がよかった。

これらの理由を丁寧に話した。するとそれでいいと言われる。
ほっとした。半年先になる。この間に見積書も出してもらうようにしておこう。

ところが三日後、こわもてのおじさんをともなって、高級車で再び来られた。そして話は決まったはずなのに、今の時期に切りたいと言われる。私はがんとして冬にしてほしいとまた言った。社長は再び了解された。こわもてのおじさんは恐ろしい表情になっていたが主導権をわたすわけにはいきません。


昨日である。最初に登場したおばあさんと、木を切る職人と言う人があらわれた。時間が足りないくらいであるのに、どうしてこう何度も繰り返す! 私は相当不機嫌になって応対した。
すると職人さんは、葉のあるほうが切りやすいので今切らせてくれと言うのである。クレーンを使わず、葉をひっぱって切り進めていくのだという。
要するにその方法でしか仕事ができないのではないかと感じた。それなら確かに、葉の落ちた木ではやりにくくまた危険度も増すだろう。
↓は葉っぱの落ちたところ。
みよや すがすがしき はだかんぼ


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※今朝(7/7)になって、とにかく見積書をまず出してもらって決めるべきと決意し、いただいた名刺の電話番号に電話をしたら、「只今使われておりません」という。困ったなぁ〜、どう考えたらいいんだろう〜・・・・・。
とにかく社長という人に直接話をしなくては、と携帯の番号にかけてみた。すると、一昨日の、おばあさんと職人さんらしい人が来られて話したことが、まったく伝わっていないようなのである。ほんとに困ったなぁ〜、いったい何を考えておられるのか。

私が思うに、仕事がうまくいかなくて困っておられて、とにかく仕事をして報酬を得ないといけない、という状況なのではないか。
こういう時はどんなに辛いだろう。そこでうちの木を切ってもらうことにするが、ただ、いくら困っていても、必要な手順をふんで、こちらの都合も考慮してすすめてもらいたい。


そこで、私のほうも言われるままになるのではなく、相場などを把握して、仕事も見積書どおりにきちんとしてもらい、終わったら正当な値段を払う、ということにしなくてはと思った。
そして古河市の造園会社の社長さんで、造園協会の会長さんという方にうちに来ていただき、状況や木の性質をみてもらった上で、いくらかかるか、日にちはどのくらい必要かなどを判断してもらったのである。

すると、値段、時間ともに、私が感じた通りであった。そして私が最初から主張していた通り、葉はとれてからのほうが軽くなってやりやく、事故や周りへの迷惑もかかりにくい、自分なら冬にやる、という説明も納得がいく。「これがプロというものだ」と思った。

ただ、じゃあ乗り換えます、というわけにはいかない。一生懸命木をきる仕事をしようとされているのだから、こちらもある程度協力して、やりとげてもらうしかないだろう。これまでの経緯からみて、どこまでこちらの話が伝わるか気になるところではあるが。

それにしても、この心労の重さ。私というのは、悪い状況をなんのこともなく助けられることもあるが、こうやってわけのわからない隙間にはまるようになってしまうことも多い。やれやれとしかいいようがない。ヤレヤレ。