龍馬伝 第一回「上士と下士〜希望のヒーロー」

観終わって、面白かったという余韻以上に、主人公に強い共感を覚え、『これは本物だ!』と惹き付けられた。


龍馬(福山雅治)の子供時代から青春期までの中で、身分制度の厳しさを描いている。
龍馬は代々の土佐藩の主の墓を守っている武士の父(児玉清)、母(草刈民代)、父の後継ぎの兄(杉本哲太)、男勝りの姉(寺島しのぶ)に愛情深く育てられているが、厳しい身分制度のためにさまざまな忍従を強いられている。
身分といえば士農工商という枠で考えていたが、同じ武士の階級でも、上士と下士は崖の上と下ほど違うようだ。下士は、上士とすれ違う時には道の端によけ、ひざまづいて顔を伏せなくてはならないほどだ。場合によったら、切り殺されることもあり、切った上士はおとがめなしという。
子供時代の龍馬は、こうした制度のもとで、ある上士の勘気に触れ切られそうになり、それがもとで優しく寛容で深い心をもつ母(草刈民代)を亡くす。
また岩崎弥太郎香川照之)は武士でありながら下士でも下の階級のために、生きるために父と鳥籠を売り歩いているが、上士に絶えがたい屈辱を受ける。
成長した龍馬の身近にいる下士の若者たち、大森南明、宮迫博之岡田以蔵たちは、仲間が殺されたことを機に、不条理への憤りと不満を一気に高めている。彼らの心がいつ爆発してもおかしくないところまできているのだ。


私が強い共感と魅力を感じたのは、龍馬をイデオロギーの人として描くドラマではないところだ。私自身の受け取り方がそういうことだったのだろうが、龍馬だけでなく江戸末期に活躍した若者たちは、みんなイデオロギーのもとで動いている、という気がしていた。それでは人として信じられない。イデオロギーは大事なものではあるが、それによっての言動しかできないものは、自分勝手な大義名分のもとでやすやすと誰をも裏切る。大きなイデオロギーでなくても、組織のあるところ、そういう人間が社会を作り、そういう人間が唱える正義や平和が大手を振る。これでは政権交代があっても、ただ権力者が変わったというだけで、真の正義や平和や平等があるはずがないのだ。


この龍馬はそうしたところがよくわかっている。悲しみや痛みを、大きな人間愛にしていく確かさがある。・・・と強く感じたのだ。福山雅治の龍馬、凄いです。香川照之から発散されるものの強烈さ。若者たち一人一人が発しているそれぞれの個性の明確さ。ぞくぞくするほど今後が楽しみだ。


原作:福田靖・・・読まなきゃ!

視聴率 23.2%