かりん

何年か前、庭に小さなかりんの木を植えた。犬から守るために木の回りに柵を作るなどして育て、驚異的に背丈が伸び枝がはっていった。やがてある年から実がつきはじめたのだが、せいぜい数個しかならない。今年は特に少なく、たった二個しか実がなかった。その二個も熟する前に落ちてしまい、かりんは無駄に幹と枝が大きく葉が茂っているだけだった。


ところがある日、何気なく二階の窓から庭を見下ろしてわかったのだが、かりんは上の方はいかにも栄養失調的に葉のない細い何本もの枝がしゅるしゅると天に向かって伸びているのだった。そして一本の枝の先に、私の手のひらぐらいに育った実が一個ぶらさがっている。「へ〜、ヘンナノ・・・・・・」と思わず声が出た。


さて、一昨日の風が強烈だった台風のあとである。私はあのかりんは当然落ちてしまっただろうと、それを見届けるべく二階にあがった。
かりんは細い栄養失調風の葉の無い枝の先で、台風一過の太陽の光をあびていた。