Nさんちのメリー

これから夜にかけて病院に行くのだが、その前に犬たちのごはんを配っておく。Nさんちのメリーもその一匹である。「メリー、ごはんだよ〜」と声をかけながら小屋に近づいたが、いつもは大急ぎで飛び出してにこにこ笑ってくれるのに出てこない。のぞくと私がおいといた毛布に寄りかかってのっそりと私の方を見た。どうもしんどそうである。


ごはん容器の小鍋に缶詰を混ぜたフードをいれ、私は家に戻ろうとした。ふと振り向くと、メリーは顔を小屋から出してじいっと私の方を見ている。そのお宅の敷地を出る時になってもメリーはこちらを見ている。
気になってメリーの方に戻り、頭や顎をホリホリとかいたりなぜたりして、「じゃ、また明日ね」と私はまた家に向った。


今度はメリーは小屋を出て、ずうっと私を見ている。
私は、メリーが体調が悪くて、そおっと甘えさせてもらいたいんだなぁと思った。「ごめんね」と私はボソと言ってもう振り返らずに家に帰った。


帰ってからはっと思ったのである。メリーは、実際はもうどうしようもなく力がなくなっている私を気遣って見送っていてくれたのだと。犬というやつはそういうやつなのだ。猫ももちろんそうである。・・・このセリフは、なにかことあるごとに言ったり書いたりしている。何度も体感するから。